観劇レビュー・感想

馬鹿みたいに笑えることの幸せ(「NICE WORK IF YOU CAN GET IT」感想)。

あけましておめでとうございます!あけましておめでとうございます!あけましておめでとうございます!あけましておめでとうございます!あけましておめでとうございます!あけましておめでとうございます!あけましておめでとうございます!

 

こんばんは。

七咲ぴえるでございます。

いやー、新年早々から緊急事態宣言が出ちゃいました。

まさかこんなに長くこの新型コロナウイルスに悩まされることになるとは思いませんでしたね……。

でもたぶん、場所・時間の観点から局地的に見れば自分が生まれてからだけ見てももっと大きな天災はこれまでたくさん起きていて。

阪神大震災しかり、福島原発事故しかり、熊本の豪雨しかり。

だけどそのどれも今まではどこか遠い世界の他人事のように受け止めていたんだと思います。

東日本大震災のときも、3月11日当日に関して言えば東京でも停電が起きたりしましたが翌日には復旧して、
東北を中心とする本格的に被災した地域の方たちに比べたら全然大した不便は受けていなくて。

海外にも目を向けたら他にも大きな震災が起きていたり、
あるいは米国の同時多発テロとかでたくさんの人が亡くなり恐怖に陥っていたりしましたが、
それこそ海の向こうの遠い国の話として見ていたようにも思えて。

もしかしたら、自分が生まれてから初めて全世界の人にとって他人事ではない災害が起きているのかも、
と思ったりしております。

あとパンデミック系の映画とか見ていると、
数の限られたワクチンを巡って人々が奪い合いになっている様が描かれることが多いですが、
現実はワクチンが実用化されても「怖いからすぐには打ちたくない」というムードになるんだなと。

まぁ、なんやかんや新型コロナは今のところそこまでの致死率ではないから、
ワクチンの副作用のリスクと感染して死ぬ恐怖を天秤にかけたらまだまだ前者を選ぶ人が多くないのかも知れませんけどね。

早く千秋楽にならないかな……新型コロナシアターという世紀の駄作……。

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NICE WORK IF YOU CAN GET IT

はい、そんなこんなで迎えた2021年ですが。

ピエールは東京国際フォーラムホールC公演、
「NICE WORK IF YOU CAN GET IT」で観劇初めを飾ってまいりました!

昨年のお披露目公演がコロナの影響をもろに受けてしまった柚香光さんと華優希さん(オハナちゃん)のコンビ、
奇しくも2年連続で国際フォーラムでお正月公演を担っているお二人ですが、
次回公演で退団が発表されているオハナちゃんにとってはいわゆる「プレサヨナラ公演」でもあります。

わけあってピエールさんは感想文をまともに書けない人になってしまったのですが、
多くの方が観劇したくてもできない状況の中で幸いにも新年から観劇できた貴重な公演ですので、
簡単にではありますが感想を記させていただきたいと思います。

重要なネタバレには触れないように書くつもりですが、
お読みいただくかどうかはあくまで自己責任でお願い致します。

 

最近の相次ぐスケジュールの変更と、一昨年にたくさんの大好きな方々がこぞって退団してしまった反動で、
もう全然予習とかできずにこの観劇の日を迎えたピエール。

予習どころかあらすじとかも全然把握しないまま挑んでしまって、
そもそもタイトルの「NICE WORK IF YOU CAN GET IT」も何を意味してるのか知らずにいたので、
席についてから「やばい、ちょっと予習しておくべきだったか?」って焦ったんですけどね。

 

全然オーケー。

 

もうこれはなんの予備知識も事前勉強もしなくても突然見せられてもちゃんと理解できます!(偏差値8くらいの発言)

ポスターとか事前ビジュアル的なものでなんとなく想像できるかと思いますが、
よくある登場人物が概ねアホ系のハッピーコメディーです!

こういうのは難しいこと考えたり変に理屈で疑問を抱いた方が負けですからね、
なーんも考えずに楽しむのが一番!

だってね、タイトルの「NICE WORK IF YOU CAN GET IT」ですけどね。

 

結局どういう意味だったのか観終わっても分かってないもん(阿呆)。

 

で、どうやらよく聞くガーシュウィンさんの同名の曲から付けられたタイトルのようで、
後から知ったんですが劇中の曲もガーシュウィンの名曲を使っているんですってね。

なのでとりあえずその曲がどんななのかをざっくりググってみたのですが。

 

お金や名声のためだけに生きている人もいるけれど、
それがいつまでも消えないなんて保証はない。

人生に本当に喜びを与えてくれる唯一のことは恋をすることなんだ!

まぁそれができたらの話だけどね。

 

みたいなことかなと!(違ったらごめんなさい)

ちゃんと深く読解したわけではないので解釈が誤っているとは思いますが、
わたくしこのコロナ禍でこの「NICE WORK IF YOU CAN GET IT」という言葉が我々に投げかけている意味をこう捉えたのですよ。

 

「こうした方がいい」という正解があるのは分かる。

「こっちの方が意味がある」という選択肢が存在するのも知ってる。

でもみんながそれをできたら苦労しないんだよ!

みんなそれぞれ必死に生きてるんだよ!

みんながすぐに幸せになれる方法なんてあるなら教えてくれよ!

 

みたいなことでどうでしょうか!?

ものすごく投げやりなようでもあって、一方でものすごく前向きなようにも思える。

すべてを諦めたようにも見えるけど、懸命に出口を求めてもがいているようにも見える。

なーんにも考えなくても楽しめるコメディだけど、
いろいろと考えすぎて疲れてる今の世の中にすごく訴えるものが込められてるのではないかと。

それに個人的には今まで観た柚香さんの役の中でも、
すごく柚香さんの持ち味が引き出されていた作品に思えました。

初めて柚香さんを認識したのが「カリスタの海に抱かれて」のやたら笑い上戸なナポレオンだったので、
自分の中ではシリアスな役とかよりもこういう陽気なキャラクターのイメージがあるのかも知れません。

「Ernest in Love」とかにも通じる雰囲気の作品かも知れませんが、
決して超真面目とは言えない生活をしている中にも優しさを感じる主人公と言うか、言動の素直さに人間味を感じると言いますか。

 

一方のヒロインのオハナちゃん。

思えばトップになってからがっつりお芝居の公演って別箱ではこれが最初で最後なんですよね。

オハナちゃんの持ち味は何と言ってもお芝居だと思うのでこれまでちょっと淋しかったんですが、
最後の別箱公演でしっかりとお芝居を観られて嬉しかったです。

今回演じているビリーという役はいわゆる宝塚的ではないヒロインで(名前からして何だかボーイッシュに感じるし)、
清楚に男性に寄り添うタイプの女性とはかけ離れていますが、
そんな少年のようなヒロイン像が意外にもオハナちゃんにハマっていて。

普段はおっとりしてニコニコしつつ時々泣きそうなほど不安な表情になるオハナちゃんですが、
これだけの振り幅のある役を違和感なんく演じられるのはやっぱりお芝居の人なんだなーと思いました。

一見すると男の子みたいなキャラクターなので、
劇中で柚香さん演じるジミ―に色仕掛けしようとするシーンがあるんですが全然色気が出せなくて、
変な動きしながら必死にセクシーにしようとするビリーがほんとに可愛くて(//∀//)

もっともっといろんなヒロインを演じるオハナちゃんがたくさん見たかったなぁ……。

あとフィナーレもあるんですが、
デュエットダンスの衣装もすごく可愛いです!

花組カラーのピンクのドレスなんですが、
劇中では役柄的に地味な服も多い分、デュエダンではオハナちゃん本来の可憐さを見せつけてくれています!

永久輝せあに、組替えの神様が舞い降りた。

で、既にご覧になった方々の中でもかなり話題になっておりますが、
今回の公演のMVPになるかも知れない熱演を見せてくれているのが、
「トワキン・スカイウォーカー」こと永久輝せあさん(ひとこ)ですよ!

トワキンが今回演じているのは何と女役、
主人公ジミ―と結婚することになったアイリーンという女性。

 

ア……、、

 

アイリーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!(≧∀≦)(アイリーン違い)

 

 

名前からしてすごく可愛いんですが、
こちらのアイリーンは可愛いというかすごいぶっ飛んだ役でして。

でも言葉で説明しづらいんだよな……見たら一発で伝わるんだけど……(笑)。

「ミー・アンド・マイ・ガール」で言うところのジャッキーのようなポジションだと思うんですが。

でもぶっ飛び方がジャッキーどころじゃないんだよな……(笑)。

初日映像とかでもその片鱗は垣間見えると思うんですが、
面白過ぎてひとこアイリーンが出て来ると3階席からオペラロックされて目が離せませんでした……(笑)。

ひとこちゃんって僕の中ではすごく優等生で真面目なイメージで、
それゆえに新公主演経験の豊富さに比べるとどこかまだ弾け切れていない印象もあったんです。

なので、今回の女役もこんなぶっ飛んだ役ではなくて、
普通にイイ女な役なのかなと勝手に想像していて。

 

でも出てきたらすごい。

 

しかもそのぶっ飛んだ動きの数々にまったく照れも感じさせないし、
無理してはしゃいでる人特有の目線のおぼつかなさとかも無いし。

とにかくひとこアイリーンが永久輝せあ史上最大の弾けっぷりを見せているのです!

個人的に、男役さんが女役をやるのってあんまり好きではなくて、
まして今のようななかなか公演ができない状況での貴重な1作で演じるのが女役というのは、
すごくもったいないというか手放しては喜べないというのも正直な気持ちだったのですが。

でも、間違い無く今回のアイリーン役で役者としての分厚い殻を突き破る転機になっていると思います。

花組に組替えしてまだ公演数も多くない時期にこの役が巡ってきたことも大きいのかも知れませんね。

正直に言うと、ひとこちゃんは自分をアピールするのが得意なタイプではない印象だったので、
長年育った雪組から組替えして自分の良さを抑え込んでしまうことにならないだろうか?と心配したこともあったんです。

でもそれはまったく杞憂だったことを今回のアイリーン役で見せてくれています。

僕はもともと、組替えによって魅力が開花する人もたくさんいると思っているので、
組替え先で今より扱いが悪くなることがないという前提ではありますが組替えを前向きに受け止める派なんですが。

もしも組替えの神様がいたとしたら、今のひとこちゃんの開花ぶりを見て、
「な?だから悪いようにはしないって言ったろ?」とドヤ顔で自慢げに笑っているような気がしました。

たぶんこれからご覧になる方は、
ひとこアイリーンが登場するたびに客席中のオペラグラスが上がるのを目の当たりにすることでしょう(笑)。

 

そんなわけで、もともとお正月公演はハッピーな作品が良いなーと言われることも多いですが、
コロナ禍で迎えた今年はいつにも増してこの「NICE WORK IF YOU CAN GET IT」という作品がふさわしい新年だったようにも思えます。

だって、ぬーべーのお父さんも言ってたじゃないですか、
「人間、馬鹿になって人を救え」と。

まあ、この言葉の意味はちゃらんぽらんになれということではなくて、
例え何も自分に得はない状況で周りからは馬鹿に見えるようなときでも損得考えずに他人を救える人になれ、
という意味だったような気もしますが。

「不要不急」という言葉があちこちで使われていますが、
おそらく観劇という営みは人間にとって絶対的に不可欠なものではないかも知れません。

「宝塚不足で死んじゃう~!」と言う人はいても、
実際は水や食べ物のように本当に生命の危機に直結するものとは違うでしょうし。

でも、それでもどうして歴史上ずっと人々が芸術に魅了されてきたのかを教えてくれる作品のようにも思えます。

涙を流すような感動作とは違うし、歴史に残る大作とも違うかも知れない。

でも、鬱屈とした時代において、
今までいかに自分たちが「不要不急とされるもの」に支えられてきたかを思い出す日々です。

ミュージカルも宝塚も興味無い人から「不要不急」と言われ続けたとしても、
それが決して意味の無いものではないということを思い出させてくれる、
「宝塚ファン」「ミュージカルファン」でいていいんだと希望を与えてくれる、
そんな力を持った作品だと思います。

これからご覧になる方も、初めて宝塚を見たときのような、
難しいことは何も考えずに馬鹿みたいに「(⌒∇⌒)」と笑顔になれた頃の気持ちを思い出してお楽しみください!

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