観劇レビュー・感想

美しきトップ娘役という存在(「神々の土地」感想その2)

こんばんは。

宝塚男子ピエールです。

そんなわけで、本日は宙組トップスター朝夏まなとさん(まぁさま)の退団公演、
「神々の土地」の感想の続きを書かせていただきます。

ちなみにこの記事、最初の観劇後、つまり二週間前くらいにほぼ下書きは書いてあったんです。

でもこの記事で書いていることに似ていることを、
歌劇の中で上田久美子先生が語っているらしいと、
後になってTwitterで知りまして……。

「こいつ久美子先生の話パクってんだろ」って思われるかも知れませんが、
ホントに知らない間に書いていたのです……信じるか信じないかはあなた次第です……( ;∀;)

ピエールは久美子先生のお話の原文自体を読んだわけではないので前後の文脈とかは把握してないのですが、
とりあえず突っ込まれる前に先に言っておきました……(笑)。

あと、本日の記事は「歌唱力至上主義で歌ウマ意外は認めない」という方にはまったく何も響かない内容になってると思います。

生まれたときから田園調布の一戸建てに住んでる人が都内のアパートを選ぶ際の注意事項を説かれるくらい響かないと思います。

以前、ピエールの中学時代のサッカー部の部長が言うことを聞かない飼い犬に対して「誰のおかげで飯が食えると思ってるんだ!」って怒鳴っているのを見てドン引きしたという話を断捨裸零離くんから聞いたことがありますが、
たぶんそのときの犬の気持ちくらい響かないと思います(笑)。

なので、歌ウマ以外は絶対認めない、という信条のある方は、
本日ただでさえ結構長い記事なので時間の無駄になってしまうと思いますしここで画面を閉じることをお勧め致します。

あと、本日この記事が公開される頃、ピエールは断捨裸零離くんと遊んでいる予定です(どうでもいい報告)。

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トップ娘役の存在

相手役、すなわちトップ娘役不在で迎えたまぁさまの退団公演。

しかし「神々の土地」のヒロインは、
間違いなく伶美うららさん演じるイリナだったと思います。

オリガ(星風まどかさん)という婚約者がいながら、
秘かに想いを寄せ合っていたイリナと心の奥で繋がり合っているまぁさま演じるドミトリー。

もうまさに宝塚のトップコンビによくある役柄の関係じゃないですか。

トップコンビなのに相手役じゃなかったり、
トップ以外が主演の小劇場公演ではヒロイン自体がいない淋しい作品もある中で、
こんなに素敵な関係性の主人公とヒロインがいるのに、
このヒロインを演じる伶美さんがトップ娘役という役割を与えられないのは、
やっぱり宝塚ファンとして淋しく感じました。

前トップ娘役の実咲凜音さん(みりおん店長)が退団して、
まぁさまが次の公演で退団すること、
相手役となるトップ娘役を置かなかったこと、
伶美さんがまぁさまといっしょに退団すること、
それぞれ僕は知らないいろいろな理由が重なっているんだと思います。

「トップ娘役なんて肩書きにこだわらなくても、伶美うららさんはファンの心に残る娘役だった」
と前向きに受け止めている方もたくさんいると思います。

でもピエールは考え方の古い人間なので、
どうしてもそこにこだわってしまうのです(蒸し返してごめんなさいね……)。

例えば100周年のイベントでOGが集まっていたのを見ても、
ゲストとして舞台上に上がっていたのはトップ経験者の方ばかり。

在団当時はどんなに素晴らしいスターとして輝いてファンの心に残っている方でも、
後々の扱いには絶対的に「トップ」と「トップ以外」の線引きをされているのを、
宝塚ファンになって10数年の間に何度も見てきました。

伶美さんの歩んできた道のりをリアルタイムで見ていた人たちは、
きっと伶美うららという娘役さんがいたことを忘れないと思います。

でも、後から宝塚ファンになった人たちに、
「トップ娘役」という肩書が与えられなかったというだけで、
圧倒的にその名前が知られる機会が少なくなってしまうのが淋しくてならないのです。

だから僕は、やっぱりこの一公演だけでも、
伶美さんにはまぁさまの相手役のトップ娘役として舞台に立たせてあげて欲しかったと思いってしまいました。

一方で、もし伶美さんがこの一作だけトップを務めて退団したら、
それはそれで「一作で退団なんて酷い!」ってなってしまってたと思うんですけどね。

「美しいものを見ることには価値がある」

劇中で純矢ちとせさん演じるジナイーダが2回繰り返す台詞、
「美しいものを見ることには価値がある」。

初日が明けた頃にこの言葉は伶美さんそのものに向けられている言葉だという声を見かけましたが、
まさにそうなんじゃないかと思いました。

上から目線な言い方に聞こえたらすごく申し訳ないんですが(本当に全然そういうつもりではないんですが)、
伶美さんって決してピエールのストライクなタイプではないのですよ。

伶美さんって宝塚の中でも絶世の美女タイプだと思うんですが、
ピエールはもうちょっとこう味わいのあるタイプと言いますか、
ある意味ちょっと欠点のあるくらいの可愛いタイプのお顔が好みでして。

早い話が、ピエールのストライクゾーンからすると「美人すぎる」んです。

ピエールが初めて伶美さんを認識したのは「翼ある人びと」だったんですが、
「ヒロインの子はたぶん好みではないと思うよ」って事前に姉から言われたのを覚えています(笑)。

他にも早乙女わかばさんとか星蘭ひとみさんとかは好みじゃないでしょ?
っていうのをよく姉に言われるんです( ̄∀ ̄;)

超美人ってのは分かってるんですよ!?

それにどっちにしてもピエールの人生でまみえることなんて無い雲上人だってのも分かってるんです。

ただ単に「好みかどうか」っていうただそれだけの話です。

たぶん女性の皆さんも「イケメンだとは思うけど好みじゃないイケメン俳優」とかいると思うんですが、
それと同じ感覚だと思っていただけたら分かるんじゃないかと……(小出恵介とかそういうことじゃなくてね)。

 

でも、やっぱり伶美さんは宝塚のヒロインとしてどこに出しても恥ずかしくない美しさと品格の持ち主だと思います。

見た目の美しさだけでなく、品格もあること。

これこそがタカラジェンヌの「美しさ」であり、
伶美さんはそれを兼ね備えた娘役さんだったんじゃないかなと。

「宝塚歌劇団、清く正しく美しく」

宝塚ってね、その美しさだけで見る価値がある世界だと思うんです。

逆に言うと、見るだけで価値のある美しさを持つ人に真ん中に立っていて欲しいとピエールは思っています。

でももちろんこれはピエールの価値観に過ぎないのであって、
何を重視するかは人それぞれですよね。

しかしながら、最近は歌唱力を重視する人がすごく声高に叫んでいるように感じて、
歌以外の強みを持っているけれど歌は決して得意ではないタイプの人に対する批判が、
10年前とかよりもすごく辛辣になっている気がします(ただ単にネットが普及したせいもあると思いますが)。

ビジュアルが(タカラジェンヌの中で相対的に)あまり美しくないことを指摘するのは良くないけれど、
歌が苦手っていうのは正論だからいくらでも口汚く罵っていいみたいな風潮も僕にはよく分からないです。

「『歌』劇団なんだから歌えないと」ということもよく聞きますが、
それを言うなら「歌『劇』団」なんだからお芝居だってできないといけないし、
「歌劇『団』」なんだからソロシンガーのようにひたすら自分の歌声を目立たせたりするのではなく、
周りとの調和の中で歌ったり踊ったり演じたりしないといけないはず。

さらに言うと、「宝塚」なんだから美しくなくてはいけない、というのが大前提にあって欲しいと僕は思っています。

音楽学校の募集要項に「容姿端麗」があるくらいですし、
宝塚のモットーは「清く、正しく、美しく」なんですから(この「美しく」は見た目だけの美しさという意味ではないと思いますが)。

 

もちろん歌が上手いに越したことはないですし、
「私、美形だから技術なんて磨かなくていいもんね~( ̄∀ ̄)」っていうスターにまで惹かれるわけではないので、
あくまで努力もしているけどなかなか認められるまでに届かないというのが前提ではあります。
(そういう意味でピエールがタカラジェンヌに対して一番求めているのはビジュアルと人柄だと思っています)

あと僕は他の舞台でも共通する歌唱力とかの技術より、
むしろ宝塚でしか培われない男役力・娘役力みたいなものは割りと厳しい目で見てしまうタイプではあるんですが。

しかしそれらをすべて備えた人なんてなかなかいないでしょうし、
だからこそいろんな需要に応えるためにいろんな個性のあるスターがいるんだと思います。

「ミュージカルなんだから歌えないと」というのは一見もっともらしい考えに思えますが、
宝塚が世界で唯一無二の存在として君臨してこれたのは、
他のミュージカルと一線を画してきたからなんじゃないかと思ってるんです。

それはすなわち、「絶対的な美しさ」にほかならず。

もし「ミュージカルなんだから」という理屈で他のミュージカルと同じ土俵で戦おうとしてしまったら、
宝塚は100年かけて築き上げてきた宝塚にしかない存在価値を自ら手放してしまうことになりかねないとすら思っています。

「『ミュージカルだけど宝塚なんだから』他はある程度犠牲にしても美しさという武器だけは失ってはならない」と、
敢えてそう開き直るくらいであっていいんじゃないかと僕は思うんです。

でも繰り返しますがこれは僕の好みと価値観による考えなので、
そもそも歌唱力至上主義の方とはたぶん永遠に相容れない議論なんだろうなと思っています。

ただ、かく言う僕もこう見えて宝塚ファンになった初期は歌ウマなスターが好きだったので、
歌が上手なスターが好きな人の気持ちも分かるのです。

でも別に誰かに諭されてビジュアル重視派になったわけではないので、
人の好みって誰かに言われて変わるのではなく、
価値観を覆すほどの魅力を持ったスターに出会ったりして変わるんだと思います。

ピエールは外部のミュージカルをいくつか観ていたときに、
歌は確実に宝塚よりも迫力あるのに何か物足りなさを感じていて、
再び宝塚の舞台を観たときにその美しさと華やかさに改めて惹き付けられたときに、
自分が宝塚にハマった理由はこれだったのかもと気付いた記憶があります。

 

だから、議論したいわけでも論破したいわけでもありません。

宝塚の歴史の中に伶美うららという美しい娘役が存在したことの価値を僕なりの言葉で讃えられるのは、
たぶんこれが最後のチャンスだと思って書かせていただきました。

ちなみにもしかしたらこうして伶美さんを擁護していると、
次期トップ娘役に決定している星風さんのことを受け入れていないと誤解されてしまうかも知れないので念のため断っておきますが、
そういうつもりは一切ありません。

まだ今の若さでトップになってしまうのはもったいなかったんじゃないかという気持ちは今でもありますが、
星風さんもいずれはトップになる可憐さと華やかさの持ち主だと思っていました。

伶美さんとは持ち味が異なる娘役さんだと思いますが、
星風さんは星風さんのスタイルで素敵なトップ娘役になるのを応援したいなと思っております。

上田久美子先生による「美」のテロ

でね、これはピエールの勝手な解釈なんですが。

「美しいものを見ることには価値がある」という台詞や、
敢えてヒロインの伶美さんに一切歌を歌わせなかったのは、
上田久美子先生によるテロのようなものだったんじゃないかと。

歌唱力重視に傾きつつある今の宝塚において、
敢えて伶美さんには一切歌を歌わせずに舞台に立たせることによって、
歌わなくてもヒロインとして成立させられる宝塚の娘役の美しさを見せつけてくれたような気がしました。

伶美さんにもソロを歌う場面を作って、
「うん!最後にがんばったよね!」って思わせることもできたと思います。

でもこのイリナという「歌わないヒロイン」は、
それ以上に価値のある美しさをもって観る者を物語の世界に浸らせてくれた気がします。

もちろん、毎公演毎公演ヒロインが歌わない作品だったらそれはまずいですが、
「いざとなったら一曲も歌わなくたって美しい者にはヒロインとして存在することができる」
ということを伶美さんの姿を通して訴えかけてきたように感じました。

繰り返しますがこれはピエールの勝手な解釈なので、
実際は「うららには無理に歌わせなくていいや」っていうだけだったのかも知れませんし、
本当の意図は僕には分かりません。

けれど、歌わなくても間違いなく伶美さんはヒロインとして舞台上に存在していました。

 

ということで、今回は伶美さんについて感じたことを中心に書かせていただきました。

他のキャストの方々についてもちょっとずつ書きたいことはあったのですが、
とりあえず次回はいったんショーの方の話を書かせていただこうかなと。

もしかしたら、その後にまたちょっとお芝居の感想の番外編も書かせていただくかも知れません(笑)。

 

これまでにも何度かあった、トップ娘役不在という状況。

けれど、やっぱり宝塚は男役スターだけでなく、
美しく可愛い娘役さんたちもあってこその世界だと思います。

これからの宝塚において、美しい娘役さんたちの存在が蔑ろにされないことを祈ります。

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