ユーリがラムセスを振ったワケ(「天は赤い河のほとり」感想その4)
こんばんは。
宝塚男子ピエールです。
実はピエール、本日もあの世に星組を観に来ております~!♪ヽ(´▽`)/
たまたま取れたのが二日連続だったのです( ;∀;)
なのでまだ星組の感想を書く時間が無いため、
既に千秋楽も迎えてしまっておりますが先に下書きしておりました宙組新トップコンビ真風涼帆さんと星風まどかさんの大劇場お披露目公演、
「天は赤い河のほとり」の2回目の観劇の感想が終わっていなかったので本日はそちらをアップさせていただきたいと思います。
こないだ宙担ぽぽんたさんとLINEでお話していた際、
ぽぽんたさんが「ユーリがラムセス(芹香斗亜さん)を選ばない理由が分からない」とおっしゃっていまして。
「一生苦労はさせないゼ」って言ってるラムセスを振ってしまうなんて、と。
おそらくこれは女性の方がユーリの心理を正しく理解できるとは思うのですが、
ピエールなりにユーリがラムセスになびかなかった理由を考察してみましてね。
ユーリってまだ高校生で、たしか原作だと最初は中学生とかですよね。
きっと「苦労させない」って宣言してくれる人の価値がまだ分からないんじゃないかと思うんです。
この年頃って男女問わず、初恋の相手とか初めての彼氏・彼女が運命の相手と信じて疑わなかったりするじゃないですか。
彼氏と撮ったプリクラに「ぜったい結婚するし♡」とか書き込んだのをTwitterのアイコンにして「カイルはウチの彼氏♡他の女は絡むの禁止×」みたいなことをプロフィールに書いてたりするじゃないですか(偏見)。
「苦労させない」って言ってきたり、超お金持ちの男に言い寄られると、
逆に「私は金になびくような女じゃない。これは本当の恋じゃない」って反発してしまう年頃なんじゃないかな~と(それを言ったらカイルもお金持ちなんですけどね)。
もしユーリがタイムスリップしたのが中高生の頃じゃなくて、
社会人2年目くらいで連日の残業や理不尽な上司・同僚との人間関係に疲れ果てているタイミングとかだったら、
ラムセスにもチャンスはあったのではないかな~、なんて(笑)。
まだ10代のユーリがタイムスリップして最初に出会ったのがカイルだった時点で、
もはや勝負は決していたのかも知れない、と思いました。
卵から生まれた雛が最初に見た相手を親と認識するように、
古代に来て最初に出会い恋をした相手であるカイル以外の男を愛することはできなかったんでしょうね。
でもそれならなおのこと氷室くんのこと忘れないであげて!?( ;∀;)
わたくし宝塚を観るようになってそこそこ乙女の心理も理解できるようになったつもりでいたけれど、
周囲の女性陣の氷室くんの存在に対する反応と自分のそれとのギャップを目の当たりにして、
「ああ、やっぱり自分は男なんだな……女性ファンとは違うんだな……」って思いました(笑)。
真面目な話、もし「天河」が少女漫画ではなく少年漫画だったら、
展開や結末もかなり変わってた気がするんですよね。
主人公の男子高校生カイルくんは、
タイムスリップした古代ヒッタイトで皇女のユーリと恋に落ち。
不思議な魅力を持ったカイルくんは他の皇女たちからもモテモテ。
けれどカイルくんは他の皇女には一切なびかずユーリと共にヒッタイトをより良い国にするために奮闘し。
最大のライバル国であるエジプトとの戦にも勝ち、
さぁ、いよいよ皇帝に即位だ!と思ったのもつかの間。
ここからが実際の「天河」と違うんですが、
最後はやはり現代に残してきた彼女の元へと帰るような気がするんです。
「名前を付けて保存」な男って、他の魅力的な女性に惹かれつつも、
最終的に本来の彼女を選ぶというところに美学を感じると思うんですよね(現実に選べるかどうかは別として)。
あと、現代の彼女のもとへ帰るのをやめて皇帝になったりしたら女性読者からすごい反感買うんじゃないかなと(笑)。
なんかこの辺にも男女の価値観の差とかを垣間見た気がして面白かったです。
でも、最後にユーリが現代に帰らないことによって、
「天河」という作品は他のタイムスリップものと一線を画す作品になっているのではないかっていう気もします。
物語の作り手の心理からするとやっぱりタイムスリップした主人公って、
最後は元の世界に帰らせて丸く治めたくなってしまうものなんじゃないかと思いまして。
あと、それこそユーリが大人だったら古代で自分がいろいろやることで歴史が変わってしまうことを気にしてしまうと思うんですが、
ユーリって結構その辺まったく気にせずに思うがままに行動するじゃないですか。
ユーリがまだ中高生で歴史にも詳しくなく、
「ヒッタイト」という国名すら知らない様子を序盤に見せるのって、
実は歴史を変えることをためらわずに行動していくことの布石なのかも知れないな~と後から思いまして。
しかも結果的にユーリの行動によって歴史通りの流れに落ち着いているので、
ユーリが古代に呼び出されたのも元々の歴史通りの運命だったんだろうなと思いました。
手を差し出すマッティワザ
今回は前回確認することができなかったポイントを見逃さないようにしようと思っていたのですが、
それがどこかと言いますと。
愛月ひかるさん演じるマッティワザが、
プロローグで歌い出すところで澄輝さやとさん演じる姉のネフェルティティに手を差し出す場面。
本当に一瞬なんですが、今回はしっかり確認することができました。
ひかるちゃんは、苦しみや切なさを滲ませる表情が本当に素敵ですよね。
「不滅の棘」も望まずに得てしまった永遠の命に苦悩する役がすごくハマっていましたが、
こういう表情が本当に雰囲気があっていいな~と思います。
で、改めてこのプロローグのマッティワザが歌う部分の歌詞を、
帰ってからルサンクで噛みしめていたのですが。
「失くした愛と砕けた夢を抱いて」
短いフレーズではあるのですが、「失くした愛」と「砕けた夢」って、
どんだけいろんなものを奪われながら生きてきた人なんだろうと( ;∀;)
そしてそのあと、本編でマッティワザが登場するシーンの歌の最後のフレーズ。
「心を捨て進もう血塗られた道を」
最愛の姉と引き裂かれて、愛や夢を奪われて、
マッティは心を捨てることでそれを乗り越えてきたんですよね。
本来は姉思いの優しい男の子が、
「血の黒太子」と呼ばれるほどに冷酷な男になってしまう。
なんかキン肉マンに登場しそうなキャラクターだなと思って無性にキン肉マンが見たくなってしまいました(笑)。
(ちゃんと読んだこと無いから具体的にどの超人が当てはまるか分からない……ウォーズマンとか?)
マッティの出番は短くて、
登場したと思ったらすぐに敗れてしまって、
いきなりお姉さんのことを語って形見をユーリに託して去って行くという、
原作を知らないとなかなかその人となりを理解しづらい難しい役だとは思うのですが。
けれど原作のファンでもあったというひかるちゃん、
さすがそんな短い場面の中でもしっかりと丁寧にマッティワザという人物を理解して挑んでいるのが伝わってきました。
薬を盛られる二人
あともう一つ噂に聞いていた小芝居というか、ひっそりと行われていたやりとりが。
カイルの部下のシュバス(瑠風輝さん)とゾラ(優希しおんさん)が、
ナキア(純矢ちとせさん)から「隊長にしてやる」とそそのかされてカイルたちを裏切ってしまうくだり。
最初に観たとき、立て続けに同じ手口で裏切る二人を見て、
「そんなあっさり裏切っちゃうだ~、ずいぶん忠誠心薄かったんだな~( ̄∀ ̄;)」と思ってたんですが。
しかし後から噂で聞いたところによると、
それより前の場面で星条海斗さん演じる神官ウルヒから薬を飲まされているそうじゃないですか!
正確に言うと薬と言うより、水を操るナキアの「黒い水」という、
人の心を操れる秘薬だと思うのですが、
シュバスとゾラはそれを飲まされて裏切ってしまっていたんですね~。
でも漫画だと黒い水を飲まされた人は目が虚ろになって感情を失ったように操られている印象だったので、
あの裏切る場面はもう少し淡々とロボットのように刃を向ける感じにした方が、
ナキアに操られて裏切ったというのが分かりやすかったかもな~とか思ったりしました。
生き残れなかったティト
それから愛海ひかるさんの演じるティト。
原作だと、物語のかなり序盤でユーリを守って殺されてしまうんですよね。
しかし宝塚版だとその場面は割愛されてティトは物語後半まで生きながらえていて。
「あの場面かなり残虐だから宝塚版だとティトは死なない設定にしてるのかな?」と思っていたんですが。
最終的に、原作だとウルスラが皇帝暗殺の罪をかぶって処刑されてしまう部分を、
ウルスラが登場しない宝塚版ではティトがその役割を担って処刑されてしまって。
ティト、生き残ったと思ったのに生き残れなかったーー( ;∀;)
って思いました(笑)。
愛海さんを始め、今回はいろんな下級生がいつもより活躍していた反面、
キャラクターが多い分、上級生は普段よりちょっと相対的に出番が少なくなってしまったな~というのも感じましたね。
そんな中で特に大活躍で嬉しかった少女時代のナキア役の華妃まいあさんですが( ^ω^ )
最後に大人ナキアの純矢ちとせさんたちが歌う後ろで、
少女ナキアが少年ウルヒ(真名瀬みらさん)の手を取って歩いていく場面。
前回気付かなかっただけで毎回そうだったのか、
はたまた今回がたまたまだったのか分からないのですが。
ナキアがウルヒの手を取るとき、
受け身なウルヒの手をナキアが拾い上げるように、
ナキアの方が能動的に手を取っていたのですよ!
通常だった男の方が手を取るこのが多いじゃないですか。
ものすごく何気ない仕草なんですけど、
ナキアの方がちょっとリードしているこの感じが、
皇妃であるナキアと神官のウルヒの立場の差を表しているのと同時に、
本来のウルヒがすごく奥手で純粋な子だったんだな~というの感じさせてくれました。
ますますウルヒとナキアに感情移入してしまうぜ……( ;∀;)
ということで今回は気になった箇所を細切れな感想で書かせていただいてしまいました。
原作知らないとところどころ付いて行けない箇所もあるのは否めないのは原作ものの作品あるあるかも知れませんが。
宝塚で上演されなかったら、きっと一生読む機会の無かったであろう「天は赤い河のほとり」という漫画。
漫画を読んでハマってしまい、宝塚版を観てより好きになり、
今度はまた漫画を読み返してみたいな~という気分になっております。
そして新生宙組が素敵な作品でお披露目できたことも嬉しいです。
改めまして、真風くん、星風さん、そして新生宙組の皆さん、
大劇場お披露目おめでとうございました!
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